2023年4月25日火曜日

記事の紹介:「遠い国」の女性たち

 2023年4月25日の毎日新聞デジタル版で、RAWAと連帯する会共同代表・清末愛砂のアフガニスタン再訪と現地で見聞きした女性の状況等について紹介されました。


「遠い国」の女性たち=和田浩明(デジタル報道グループ)
https://mainichi.jp/articles/20230423/k00/00m/030/046000c



2023年4月24日月曜日

拾い読みアフガニスタン (第18回)

 「ジェンダー・アパルトヘイト」(2)

 2023424

 前田 朗

 

文献紹介

Afghanistan Under The Taliban : A State Of “Gender Apartheid”? By Naheed Farid and Rangita de Silva de Alwis, Princeton Spia Afghanistan Policy Lab. 2023.

目次

要約

背景:ターリバーンのアフガン支配

教育への影響

終わらない任務:破棄された約束

国際社会への勧告

資料

資料1「20218月以後のターリバーンによる女性の権利制限政策」

資料2「アフガニスタンにおける教員へのインタヴュー」

終わらない任務:破棄された約束

ターリバーン復権以前、アフガン政府は女性と少女の権利保護に関与していた。2004年憲法第43条は教育の権利を保障した。2009年の女性に対する暴力撤廃法は、女性の教育の否定は女性に対する暴力の一形態と定めた。

2015年、初めての国内行動計画が策定された。201518年と201922年の2段階の計画を定めた。国連加盟国として国連憲章の諸原則を実施し、安保理事会決議1325を実効化しようとするものであった。

アフガンは各種人権条約の当事国であり、CEDAWICESCRCRCHRCICCPR)も含まれる。20218月にターリバーンが発した命令はこれらの関与に反するものであった。

国際社会への勧告

各国政府と国際社会は、女性に悪影響を与えるターリバーンの政策を非難してきた。20218月、女性差別撤廃委員会と子どもの権利委員会はターリバーンに女性の権利の保護を呼びかけた。

2022323日、ターリバーンが高校と中学の女子教育を閉鎖するや、国連安保理事会はターリバーンに女性の教育の権利の尊重を呼びかけた。

202278日、国連人権理事会は、「アフガンの人権と少女の状況」という決議を採択した。

20221229日、女性差別撤廃委員会は、大学から女性を排除するターリバーンの決定を強く非難した。

しかし、もっと多くの努力が必要である。各国政府、国連機関、国際機関、地域機関、企業、NGOは次のような行動をとることを検討するべきである。

・ターリバーンと国際社会の対話により、女性と少女の権利の保護と促進を保障すること。

・国連や国際機関は、女性同伴でない限り、ターリバーン高官との面会を拒否するべきである。

・国連及び各国政府は、女性支援とエンパワーメントに関与することを確認しなければならない。アフガン女性は、世界中からの女性支援声明を必要としている。

・国連アフガン支援ミッションUNAMAの新代表は、女性の人権を擁護するべきであり、アフガン女性を採用し、女性が政治的対話や交渉に加わるようにするべきである。

・諸団体は、教育が再開されるまでの間、少女のためにオンラインとリモートの学習コースを設定するべきである。

・諸団体は、女性教員のためにリモート計画と研修を開発するべきである。

・各国政府は、少女が外国の高等教育機関に通えるように機会を提供するべきである。

・国連その他の機関は、女性が公共の場で男性付き添いなしに自由に移動できるように協力するべきである。

・国際機関は、アフガン国内及び国外に避難したアフガン女性団体との協力関係を強化するべきである。

・諸団体は、アフガン難民住民のために教育機会を継続できるように努力するべきである。

 

 

 

 

 

2023年4月16日日曜日

アフガニスタンは今  アフガニスタン訪問報告会  ターリバーンの再支配と経済制裁下での女性たち 

 チラシ ←ダウンロードしてください

3月12日~25日、アフガニスタンを訪問しました。2015年以来、8年ぶりです。
2021年8月のターリバーンの再支配下で女性の就労や就学が極端に制限され、これまで活動して来たNGOなども活動が困難な状況になっていました。ターリバーンの再支配以後の国際社会の経済制裁により、多数のアフガン人が貧困にあえぎ、深刻な人道危機が起きています。

【報告者】 
清末愛砂(RAWAと連帯する会共同代表: 室蘭工業大学大学院教授)
前田朗(RAWAと連帯する会共同代表:東京造形大学名誉教授・朝鮮大学校講師)
桐生佳子(RAWAと連帯する会事務局長)
高橋国夫(RAWAと連帯する会事務局)

☆[北海道] 5月20日(土)  開場14時 開会14時~16時半
 会場:   室蘭市中小企業センター 中会議室A
   連絡先:増岡(080-5830-4714)  参加費:500円


☆[東京] 5月27日(土)  開場17時半 開会18時~20時半
 会場   :IKE・biz (旧豊島区勤労福祉会館) 第3会議室 
   連絡先:前田 e-mail :akira.maeda@jcom.zag.ne.jp  
                       090-8212-0524(当日)  参加費:500円


☆[大阪] 5月28日(日) 開場13時半 開会14時~16時半
 会場  :大阪市天満橋 ドーンセンター セミナー室
  連絡先:桐生(090-3656-7409)  参加費:500円


<共催> RAWAと連帯する会   室蘭工業大学大学院・清末愛砂研究室
憲法を学ぶ会(室蘭会場)       平和力フォーラム(東京会場)


 

拾い読みアフガニスタン (第17回)

 「ジェンダー・アパルトヘイト」

2023416

 前田 朗

 

偶然入手した文献だが、「ジェンダー・アパルトヘイト」という言葉を初めてみたので、ざっと読んでみた。

Afghanistan Under The Taliban : A State Of “Gender Apartheid”? By Naheed Farid and Rangita de Silva de Alwis, Princeton Spia Afghanistan Policy Lab. 2023.

Naheed Faridは、ターリバーン政権以前のアフガンの議員、アフガン議会・人権・市民社会・女性問題委員会議長。現在、プリンストン大学アフガン政策研究センターの専門研究員。

Rangita de Silva de Alwisは、国連女性差別撤廃委員会委員、ペンシルヴァニア大学ロースクール研究者、ハーヴァード・ケネディスクール客員研究員。

目次

要約

背景:ターリバーンのアフガン支配

教育への影響

終わらない任務:破棄された約束

国際社会への勧告

資料

資料1「20218月以後のターリバーンによる女性の権利制限政策」

資料2「アフガニスタンにおける教員へのインタヴュー」

全体で45頁だが、本文は7頁目までである。資料1が832頁目まで、資料2が3345頁目まで。以下、本文をご簡潔に紹介する。

要約

20218月のアフガニスタンのターリバーン復権以来、アフガン女性・少女は権利への重大な後退を余儀なくされ、教育の否定から移動の制限、経済への参加の欠如に至る受難を被っている。アフガニスタンは現在、ジェンダー・アパルトヘイト状態である。本報告書で、女性・少女についてターリバーンが出した指令の射程と影響を分析する。これらの指令がいかに国際人権規範や、旧政権が行った保障に違反するかを論じる。本文の分析に加えて、アフガニスタンの女性教員10人にインタビューを行ったが、彼女たちの生活は学校閉鎖やその他の差別政策により激変した。最後に、国際社会はアフガニスタンの女性を支援するため、より大きな活動をしなければならず、特に国際人権基準に合致したジェンダー平等教育を促進するようにしなければならない。コスト問題及びターリバーンがその行動を変える兆候がないので、アフガニスタンのジェンダーに基づく人権侵害状況を市民的政治的経済的社会的文化的文脈を重ね合わせて対処する緊急性があることを論じる。

ジェンダー・アパルトヘイトについて、次のような註が付されている。

ここでターリバーンの政策について用いているジェンダー・アパルトヘイトとは、今日の国際人権法において公式に定義された用語ではない。この用語はその人種的同価値性ゆえに借用した。この用語は、ターリバーン支配下のアフガニスタンで起きている組織的なジェンダー隔離、権利侵害、教育の否定を適切に記述していると考える。

背景:ターリバーンのアフガン支配

2021815日、ターリバーンがカブールを占拠した。当日、ターリバーンはすべての少女の中学と高校の閉鎖を命令した。公式文書は1か月後。97日、ターリバーンは政府要員を男性のみにするとした。

922日、政府はパシュトゥン以外の民族からのメンバーも加えたが、女性はいなかった。女性省を廃止し、その建物を美徳推進省にするとした。ターリバーンは憲法を停止し、議会を解散した。

20218月以来、女性・少女に関連する36のシャリアによる命令を出した(資料1参照)。その多くは、女性に許される行動、ドレスコード、旅行の際の男性同伴者の義務などである。高齢女性と少女以外の女性は顔を隠さなければならない。

「ガイドライン」や「勧告」とされているが、その強制度合いは地方によってさまざまである。違反した場合に、その女性の男性家族を処罰するとされている。

ターリバーンによる権利制限は、女性の生活に重大な影響を与えた。20223月までに、66%の女性が仕事を失った。子ども結婚とジェンダー暴力のリスクが高まった。

教育への影響

女性にとっては、社会的制限に加えて、もっとも悪影響を被ったのが教育である。UNICEFによると、学校に通っていない子どもの60%が少女である。2022年春に少女も学校に戻れることになったが、実際には戻れていない。223月、ターリバーンは少女が小学校に戻れると発表したが、中学と高校からは閉め出されたままである。2212月、大学から女性が追い出された。

10人の女性教員にインタヴューを行った。21の質問である(資料2参照)。名前と地名は匿名にした。

インタヴュー結果は、恐怖と不安定を明らかにした。女性は権利と市民的自由を喪失した。経済的困難を余儀なくされ、仕事を失った。少女は学校に行けず、代替手段もない。子ども結婚を強いられることが増加した。マジョリティ女性よりもマイノリティに属する女性の方がひどい困難に陥っている。

「私の州には歌手、教授、アスリート、政治家を目ざす少女がいましたが、今はみんないなくなりました。才能のある少女は逮捕され、国から逃げ出すか、今は隠れて暮らしています。家族は娘を結婚させようとしています。というのも、ターリバーンと結婚させられることを恐れているからです。ほとんどの少女が結婚を強いられています。こんなことになるとは想像もしなかった悪夢です。」(匿名の女性教員)

 

 

 

『パレスチナ 今 私たちができること』のお知らせ

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