2022年9月7日
前田朗
9月6日、国連人権理事会第51会期(本年9月12日~10月7日)のために、リチャード・ベネット「アフガニスタンの人権状況に関する特別報告者」の報告書(A/HRC/51/6. 6 September 2022)が提出・受理され、公表された。
報告書は18頁で、目次は次のとおりである。
Ⅰ 序文
Ⅱ 任務のための構想と優先順位
Ⅲ 背景
Ⅳ 国際法枠組みの適用
Ⅴ 人権状況の観察
A 女性と少女の人権状況
B 経済的社会的文化的権利
C 紛争関連人権侵害
D 報復殺害
E 拘禁条件と被収容者の処遇
F 民族的宗教的マイノリティ
G 特別な関心を呼ぶその他の集団
H 基本的自由
Ⅵ 司法運営
Ⅶ 結論と勧告
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昨年8月のターリバーン復権後、国連人権機関からいくつもの報告書が出され、本ブログでも紹介した。それらと重複する内容が多いが、ベネット特別報告者は2022年5月にアフガンを訪問し、調査を行った。アフガンの外でも多くのアフガン人、研究者、NGO、国連スタッフから情報を入手した。ⅤのAの「女性と少女の人権状況」を中心に簡潔に紹介する。
ⅤのA 女性と少女の人権状況
1 教育
2 子ども結婚
3 女性に対する暴力
4 勤労と生活の権利
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ターリバーン復権後、他の国と違って、女性と少女が公的空間から急速に姿を消し、不利益を被っている。カーブルで面会した女性は次のように言っていた。
「アフガン女性は忍耐強くなければなりません。長年の紛争で苦痛にさいなまれてきました。息子や娘たちの弔いをしてきたのに、自分や娘たちの将来は苦痛と恐怖が待ち構えています。国際社会から忘れられていると感じて、いっそう苦しみが増します。」
アフガン女性は歴史を通じて重大な差別に直面してきた。この20年間、アフガンは女性と少女の人権を実現する重要な前進を見てきた。2004年の憲法や女性に対する暴力撤廃法の制定、女性差別撤廃条約の批准、女性省の設立、国内人権委員会の設置、被害者支援制度である。
事実上の政権であるターリバーンは、女性の権利はシャリーアのもとで保護されるという。しかし、2004年憲法は停止され、女性の法的地位に関する法律も停止状態である。女性のための特別法廷も解散させられた。
少女の中等教育の停止、ヒジャブの義務化、女性の自宅待機、近親男性同伴のない旅行禁止、女性法律家の資格停止、カラフルな衣服の禁止がなされた。女性の行為を理由に男性家族が処罰される。家庭内暴力が増える。女性の移動の自由の制限は健康や教育へのアクセスに影響を及ぼし、暴力状況からの保護を求めることを困難にする。
こうした状況を前に、アフガン女性は非暴力の抗議と抵抗をしている。カーブルで面会した女性は次のように述べた。
「私たちは顔を上げ続けるでしょう。自宅に閉じ込められたままではいません。声が聞き届けられるまで、声を挙げ続けるでしょう。権利と尊厳を求めて闘い続けます。」
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1 教育
1996~2001年、ターリバーン政権時代、少女の学校は閉鎖された。2022年3月21日から少女が学校に通えるようになったが、2日後には中等教育は閉鎖され、イスラム原則に従った制服が求められた。34州のうち24州で中等教育が閉鎖され、85万人の少女が学校を去ることになった。
カーブルで面会した若い女性はフラストレーションを表明した。
「先月は涙でした。毎日将来が暗くなる悪夢だと言い聞かせています。会計の勉強をして、衣服業をやりたかった。外国に行って、学んでからアフガンに戻りたい。日々、私も友人も、夢を奪い取られています。」