2022年6月26日日曜日

拾い読みアフガニスタン  (第7回)

2022年6月26日

前田朗


OMCTSOS-Torture Networkが、ドブラフスカ・シモノヴィチ「国連・女性に対する暴力特別報告者」の協力の下、「女性が沈黙を破る アジアのジェンダーに基づく拷問」という報告書を公表した。2021年までの情報。

目次

序文

1章「スリランカにおけるFGMと再生産への暴力」

2章「フィリピンにおける人身売買と性的搾取」

3章「拷問と紛争時の性暴力のネパールの被害者の試練」

4章「モンゴルの精神保健施設におけるLBTI女性に対する暴力」

5章「インド・バングラデシュ国境の女性の拷問」

6章「カンボジアの職場における女性に対する性暴力」

7章「バングラデシュの強姦――社会的法的問題と司法の障壁」

8章「アフガニスタンのターリバーン統治下における女性に対する暴力」

結論と勧告

8章「アフガニスタンのターリバーン統治下における女性に対する暴力」の執筆は、ムジタバ・モラディであり、市民社会と人権ネットワークの協力を得た。以下簡潔に紹介する。

目次

第1章         序文

第2章         アフガニスタンの国際人権義務

第3章         シャリア法

第4章         女性問題省の美徳省への変更

第5章         司法制度の解体

第6章         女性シェルターの閉鎖

第7章         強制結婚

第8章         子ども結婚

第9章         犯人の大量釈放

第10章      女性抵抗者や市民社会活動家への暴力

第11章      健康ケアの否定

第12章      女性に有害な人道危機の悪化

第13章      結論

1   序文では、20218月のターリバーン復権以後、アフガンは世界で最も危険な場所になった押し、女性の90%が暴力に直面しているという。2015年の国連・女性に対する暴力特別報告者の調査でも87%の女性が被害を経験したとしていた。新型コロナ禍のため事態は悪化している。

2001年に独立人権委員会と女性問題省が設置され、2009年に女性に対する暴力撤廃法が制定され、女性に対する暴力、性暴力、強制結婚、未成年結婚、強制売春、暴行、傷害が犯罪とされた。選挙で選ばれた議会が憲法を制定し、世界人権宣言にも言及した。拷問等禁止条約を批准した。

しかし、2021815日、ターリバーンが復権し、積極面は覆された。女性被害者の希望は閉ざされた。その後の6か月の状況を調査した。

2   アフガニスタンの国際人権義務では、アフガンが女性差別撤廃条約と拷問等禁止条約の当事国であり、国連人権理事会決議が、アフガンに国際人権の履行を求めたことに言及している。拷問禁止委員会は2017年にアフガンに勧告を出し、女性差別撤廃委員会は2020年に勧告を出した。例えば、女性に対する暴力事件の徹底捜査、訴追、被害者救済。女性に対する暴力を理解するための啓発と研修の実施。警察や裁判所職員への女性の採用。ジルガではなく公式の裁判所における裁き。女性被害者のシェルター、法律扶助、賠償の提供。

3   シャリア法では、ターリバーンの最初の記者会見で「シャリアの枠組みの範囲内で女性の権利」と述べたことが引用される。シャリアは、クルアーンと預言者ムハンマドの言葉から引き出された道徳・倫理原則であり、その解釈はイスラム学派により多様である。ターリバーンの解釈は、地域の部族社会の経験と文化に根差している。ターリバーンがシャリアをいかに法律化するかはまだ明らかではないが、女性の権利を制約することだけはわかっている。

ターリバーンにとって、女性の教育、労働、衣服はシャリアの最重要項目とされ、厳しい制約がある。カーブル市長のハムドラー・ヌーマンは、女性は家にいるべしと考えている。20211117日、教育省は男子のための学校再開を命じ、少女の教育の権利を奪った。ヒジャブとブルカは象徴的意味を持っている。

RAWA来日! RAWAと連帯する会結成20周年記念スピーキングツアー 『ターリバーンの再支配から早3年 アフガニスタンのいま 女性と子どもたち、そして私たち』

■チラシ表面 ■チラシ裏面 ↑ダウンロードできます   アフガニスタンでは、2021年ターリバーンの復権以後強権的な支配が続いています。 とりわけ女性の自由の制限が深刻で、教育や就労の機会が制限されています。国連をはじめ多くの人権団体がこれを批判し是正を求めています。しかし改まる...