2022年4月10日日曜日

拾い読みアフガニスタン(第2回)

 2022412

前田 朗(RAWA連共同代表)

 

 前回に引き続き、20223月の国連人権理事会(HRC)第49会期に提出された、国連人権高等弁務官(UNHCHR)の報告書『アフガニスタンにおける人権状況、及び人権分野における技術的支援の達成』(A/HRC/49/90. 12 January 2022)を紹介する。

「Ⅶ 女性に対する暴力撤廃と女性の権利の促進」の後半をざっと紹介する。

B 女性に対する暴力の撤廃

 2020111日から2021730日まで、国連アフガニスタン支援団(UNAMA)と国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、公式の司法手続きに届けられた、女性と少女に対する暴力の刑事犯罪を200件記録した。殴打が60、強姦が34、ハラスメントと迷惑行為が23、殺人が19、強制結婚が18、子ども結婚が16、傷害惹起が15、強制自殺が13、強制売春が2である。同じ時期にUNAMAOHCHRは、タリバーンの非公式手続きに届け出られた、殺人4、非人間的及び残虐な取り扱い3、強姦1を記録にとどめた。紛争に関連した性暴力の強姦も記録された。


 2020127日、UNAMAOHCHRは『女性と少女に対する暴力犯罪について正義を求めて』という報告書を公表したが、これは20189月から20202月の18カ月の調査記録である。取り上げたのは次の12の犯罪である。殺人、強姦、強制売春、被害者の個人情報の公開、危険な劇薬物の使用、自殺強要、自殺、傷害、人身売買・強制結婚、子ども結婚、強制隔離。


 303件を分析した結果、女性と少女を尊重し、司法へのアクセスを保障することができていない。UNAMAOHCHRが分析した事件の半数は、裁判にかけられた。犯人が有罪となったのは40%に過ぎず、多くの女性と少女は司法の援助を受けられず、不処罰のままである。女性と少女に対する暴力の有罪率は上がっているが、女性に対する暴力撤廃法の事案でも女性と少女が捜査田訴追手続きを動かすのに負担が大きい。特に顕著なのは「名誉殺人」の有罪率が低いことである。


 2020129日、検察庁はアフガニスタンにおける女性と少女に対する暴力の状態について報告書を公表した。20191222日から20201021日の間の女性に対する暴力の訴追事例2,435件の分析である。分析の結果、キーワードとして挙げられたのは非識字と貧困である。検察庁によると、暴力事件での女性の司法へのアクセスと、女性の経済的社会的文化的権利の享受の間には密接な関係がある。128日、検察庁は記者会見で、20191221日から20201220日に、女性と少女に対する暴力事件を2,990件認知したと述べた。カーブルで814件、地方で2,176件である。前年は2,975件で、カーブルは1,157件、地方は1,818件だった。新型コロナ禍で移動の自由が制限されていることから、被害者へのサービスが制限され、検察などの政府オフィスが開かれている時間も減っている。


 420日、高等委員会の発表によると、2020321日から21320日に、女性と少女に対する暴力事案は、最高裁に1399件、第一審と控訴審に1160件であり、被告は1594人、強姦事件が326件である。464人が無罪となり、その他は有罪となった。2021815日以後、UNAMAOHCHRは、女性に対する暴力事件が何件報告されたか情報を持っていない。訴追も判決も状況は不明である。

 

2022年4月8日金曜日

会報『ZINDABAD DEMOCRACY』36号を発行しました。

 < 36号  >   ←こちらをクリックしてください。(PDF)

     

<目次>

・巻頭言

・RAWAよりお礼メッセージ

・最近のRAWAの活動

・学校報告

・待ったなしの食糧支援

・カブールぶらぶら散歩

・RAWAに学んで

・カブールランチプレート

・カブールの現象報告

・会計報告

・事務局より


2022年4月1日金曜日

【拾い読みアフガニスタン(第1回)】

 202242

前田 朗(RAWA連共同代表)

 

 今回から時々、アフガニスタンの人権状況に関連する報告書等を紹介する。行き当たりばったりで、おまけに拾い読み程度の紹介になる。正確に翻訳するのは時間と手間がかかりすぎる。系統的に資料を紹介するのもなかなか大変だ。きまぐれで、不定期で、とお断りしておかないと、始めるのが難しい。この点はご容赦願いたい。

 20223月にジュネーヴの国連欧州本部で開催された国連人権理事会(HRC)第49会期に、国連人権高等弁務官(UNHCHR)の報告書『アフガニスタンにおける人権状況、及び人権分野における技術的支援の達成』(A/HRC/49/90. 12 January 2022)が提出された。これまでも同事務所OHCHRはアフガニスタンについて年次報告書を提出・公表してきた。

 今回の報告は2020121日から20211130日の国連アフガニスタン支援団(UNAMA)人権局と活動を中心に扱っている。話題は5つの活動分野である。

    武力紛争における民間人の保護

    子どもと武力紛争

    女性に対する暴力撤廃と女性の権利の促進

    拷問防止と手続き的安全策の尊重促進

    市民領域と、和平・和解過程への人権の統合

 報告書が扱うのは2021815日以前の活動が中心だが、アフガニスタン情勢は8月15日に激変したので、報告書は変動を念頭に置いて読まれるべく執筆されている。

目次

 序文

Ⅱ 文脈

Ⅲ 民間人の保護

Ⅳ 子どもと武力紛争

Ⅴ 拷問防止と手続き的安全策の尊重促進

Ⅵ 死刑

Ⅶ 女性に対する暴力撤廃と女性の権利の促進

Ⅷ 市民領域――ジャーナリスト、メディア労働者、市民社会活動家の安全

Ⅸ 和平と和解――責任と移行期の正義

Ⅹ 国連人権メカニズムとの協力

Ⅺ 結論

Ⅻ 勧告

 以下では「Ⅶ 女性に対する暴力撤廃と女性の権利の促進」をざっと紹介する。

A 女性の権利

 20218月以前、政府はジェンダー平等を促進する戦略を履行しつつあった。812日、大統領令202155号は、女性高等委員会を設置して、女性の権利――特に経済的社会的文化的権利、アフガニスタンの社会経済発展全体の法的保護、安全保障と政治領域について、政府の活動を概観し、指導することにした。

 女性への非差別の前進をめざす法改革は進展しつつあった。2020125日、内閣立法委員会はいわゆる「処女検査」を禁止し、検察庁、アフガニスタン独立人権委員会、アフガニスタン女性ネットワークに、刑法典第640条改正案を起草するよう要請した。2021525日、女性問題省は2009年の女性に対する暴力撤廃法の見直しを行い、女性に対する暴力の犯罪の数を22から29に増やした。6月中旬、家族法改正案が前司法大臣によって作成され、8月と9月に最終見直しの予定だった。

20201231日、女性問題省は、UNAMAOHCHRの協力で、女性に対する暴力撤廃国際デーを記念して、検察庁及び独立行政改革委員会との間で協定を取り結び、職場におけるハラスメントと闘い、行政サービスへの女性参加を増加させるための合同委員会を発足させることにした。714日、女性問題省とテレコミュニケーション省は、5人の法律家によるホットラインを発進させ、暴力被害を受けた女性と少女の申立てを受け付け、相談に応じることにした。

 国際女性デーに当たって、202134日に出された大統領令は、2年半までの刑事施設収容判決を言い渡された女性被拘禁者の早期釈放を命じた。3月7日、女性問題省はカーブルで女性デーのイベントを開催した。UNAMAOHCHRは地方の州で7つのイベントを支援し、358人の女性が参加した。

 815日、タリバーン復権以後、女性の権利に関する啓発活動、ワークショップ、ラジオ番組はすべて中断している。女性の権利活動家は生命の危険を感じ、多くが国外に逃れ、アフガニスタンで身を隠している。タリバーン政権の政策は、女性の働く権利、教育の権利、移動の自由、平和的集会の自由を制限し、20年にわたって前進してきたジェンダー平等と非差別に直接反対している。

『パレスチナ 今 私たちができること』のお知らせ

チラシPDF版  ←ダウンロードできます 『パレスチナ 今 私たちができること』   日時:11月24日(日) 14時~ (受付13:30~) 場所:エルおおさか                     アクセス | エル・おおさか 内容 ■映画『ガーダ パレスチナの詩』(古居み...