2022年4月12日
前田 朗(RAWA連共同代表)
前回に引き続き、2022年3月の国連人権理事会(HRC)第49会期に提出された、国連人権高等弁務官(UNHCHR)の報告書『アフガニスタンにおける人権状況、及び人権分野における技術的支援の達成』(A/HRC/49/90. 12 January 2022)を紹介する。
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「Ⅶ 女性に対する暴力撤廃と女性の権利の促進」の後半をざっと紹介する。
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B 女性に対する暴力の撤廃
2020年11月1日から2021年7月30日まで、国連アフガニスタン支援団(UNAMA)と国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、公式の司法手続きに届けられた、女性と少女に対する暴力の刑事犯罪を200件記録した。殴打が60、強姦が34、ハラスメントと迷惑行為が23、殺人が19、強制結婚が18、子ども結婚が16、傷害惹起が15、強制自殺が13、強制売春が2である。同じ時期にUNAMAとOHCHRは、タリバーンの非公式手続きに届け出られた、殺人4、非人間的及び残虐な取り扱い3、強姦1を記録にとどめた。紛争に関連した性暴力の強姦も記録された。
2020年12月7日、UNAMAとOHCHRは『女性と少女に対する暴力犯罪について正義を求めて』という報告書を公表したが、これは2018年9月から2020年2月の18カ月の調査記録である。取り上げたのは次の12の犯罪である。殺人、強姦、強制売春、被害者の個人情報の公開、危険な劇薬物の使用、自殺強要、自殺、傷害、人身売買・強制結婚、子ども結婚、強制隔離。
303件を分析した結果、女性と少女を尊重し、司法へのアクセスを保障することができていない。UNAMAとOHCHRが分析した事件の半数は、裁判にかけられた。犯人が有罪となったのは40%に過ぎず、多くの女性と少女は司法の援助を受けられず、不処罰のままである。女性と少女に対する暴力の有罪率は上がっているが、女性に対する暴力撤廃法の事案でも女性と少女が捜査田訴追手続きを動かすのに負担が大きい。特に顕著なのは「名誉殺人」の有罪率が低いことである。
2020年12月9日、検察庁はアフガニスタンにおける女性と少女に対する暴力の状態について報告書を公表した。2019年12月22日から2020年10月21日の間の女性に対する暴力の訴追事例2,435件の分析である。分析の結果、キーワードとして挙げられたのは非識字と貧困である。検察庁によると、暴力事件での女性の司法へのアクセスと、女性の経済的社会的文化的権利の享受の間には密接な関係がある。1月28日、検察庁は記者会見で、2019年12月21日から2020年12月20日に、女性と少女に対する暴力事件を2,990件認知したと述べた。カーブルで814件、地方で2,176件である。前年は2,975件で、カーブルは1,157件、地方は1,818件だった。新型コロナ禍で移動の自由が制限されていることから、被害者へのサービスが制限され、検察などの政府オフィスが開かれている時間も減っている。
4月20日、高等委員会の発表によると、2020年3月21日から21年3月20日に、女性と少女に対する暴力事案は、最高裁に1399件、第一審と控訴審に1160件であり、被告は1594人、強姦事件が326件である。464人が無罪となり、その他は有罪となった。2021年8月15日以後、UNAMAとOHCHRは、女性に対する暴力事件が何件報告されたか情報を持っていない。訴追も判決も状況は不明である。